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		 柳 
		
		暖かくなった春風に、柳がなびく姿は日本人好みでした。 
		「柳」は文様としても見られますが、何よりも、歌謡曲の歌詞に多く使われているでしょう。 
		代表的な歌が、「銀座の柳」。西条八十作詞、中山晋平作曲。 
		「植えてうれしい 銀座の柳 江戸の名残りのうすみどり 吹けよ春風 紅傘日傘 今日もくるくる人通り」 
		昭和初期の大ヒット曲です。年配の方ならどなたも知っているはずです。 
		戦後しばらくは誰でもが口ずさんだ歌でした。以後あちこちの銀座通りに柳が植えられました。
  
		江戸時代には、川の土手や池の周囲に柳が植えられました。 
		柳は根を深く張るので水害対策として効果があるのでしょう。東京では皇居周辺に、しだれ柳が植えられています。 
		これは戦後に植えられたものですが、江戸時代にも植えられていたのでしょうか。 
		確かに水のほとりには柳をよく見ます。 
		水辺のしだれ柳は芝居や落語の怪談話の背景に欠かせない素材になっていますし、 
		小野道風の「柳に飛びつく蛙」の話もなじみがあります。
  
		江戸「吉原」は幕府公認の遊郭でしたが、遊び帰りの客が後ろ髪を引かれる思いで振り返ったという吉原大門近くには、 
		現在「見返り柳」の碑があり、台東区教育委員会の説明看板まで立っています。
		 
		芽柳(めやなぎ) 
		  
		
		「芽吹き柳」「芽張り柳」ともいいます。柳の芽吹きをリズミカルに表現した文様です。 
		このしなやかさが風情に富み、特に文人に好まれました。 
		春の陽気の中、太陽の光を受けて輝く柳の芽吹きの様子には、穏やかな気持ちにさせられます。
		 
		枝垂れ柳(しだれやなぎ) 
		  
		
		「柳に雪折れなし」といわれるように、一見、弱々しく見える人のほうが、 
		意外に重い試練に耐え抜くことができると、精神面の強さを表すとき柳に例えられます。
		 
		柳に蹴鞠(やなぎにけまり) 
		  
		
		公家たちが蹴鞠を行う場所には、四隅に柳や桜が植えられました。 
		蹴鞠は鹿の革を2枚つなぎ合わせ、重なる部分を、さらに革で巻きます。 
		蹴鞠は王朝振りの文様素材として多用されています。
		 
		柳に稲妻(やなぎにいなづま) 
		  
		
		柳が芽吹き、燕が飛来し、稲が開花した後には恵みの雨をもたらすように願います。 
		雷の霊的力で稲を豊かな実りに導いてもらいたいものです。 
		「稲」の「夫(つま)」から「稲妻」となり、五穀豊穣を託します。
		 
		柳に花 
		  
		
		「柳」という字を使った言葉には柳眉、柳腰、などほっそりと頼りなく繊細なイメージが似合います。 
		この文様もそんな女性をイメージしたのでしょうか。
		 
		
		
		縞は幾何学文様ですが、柳の芽吹きのイメージを取り入れ、縞に変化をつけています。 
		右側の「よろけ縞」ですが、歪んだ縦縞を「よろけ」といいます。味わいのあるネーミングです。
  
		 
		
		ついこの間まで、どこの家にも「柳行李」がありました。 
		軽くて丈夫で通気性もある、あんな便利なものがいつの間にか無くなってしまいました。 
		で、ネットで見たら、うれしいことに今でも生産されています。 
		問題は思ってた以上にお値段が…。でも、こういった自然素材のものは少々値段が高くても、致し方ないでしょう。
  
		文様では「柳」と「燕」が組み合わせになって、初夏を知らせます。 来週はツバメ。ヤクルトがんばれ!
		 
		15 May 2013 
		*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します 
		
		
			
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