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		 蝶 
		
		蝶の種類は多くカラフルな蝶も見られますが、私は菜の花の上を舞い、春の訪れを知らせてくれるモンシロチョウが好きです。 
		蝶は古代から日本に棲息していましたが、文様として見られるのは、中国唐時代のものが日本に伝来してからです。 
		正倉院御物の中に蝶文様が使われています。
  
		蝶の優美で愛らしい姿は平安時代から和風の文様に変化し、貴族の衣装文様に使用されています。 
		「有職文様(ゆうそくもんよう)」といって、 
		中国から伝えられた文様を平安時代以降公家の装束や調度品などに用いた伝統的な文様です。 
		桃山時代には能装束や、小袖に好まれて大胆、かつ華やかな文様として使われています。
  
		一方、蝶の成長過程は卵から、青虫、脱皮を繰り返し、さなぎ、羽化して美しい羽を広げて成虫つまり蝶となって舞う、 
		という神秘的ともいえる変化をします。 
		さなぎになって、一度死んだように見え、そこから羽化する姿に、 
		武士たちからは不死不滅の象徴として扱われ、家紋に多く登場しています。 
		家紋に使われる蝶は力強く、模様を強調しています。ちなみに、平家の家紋は揚羽蝶です。
  
		また、一方では蝶は花の上を次々に飛び移るので、寄る辺定めぬ心と見え、蝶文様を嫌う人もいるので、 
		正式の場での蝶文様の着物はそれなりに気を使ったほうが良いでしょう。
		 
		群れ蝶 
		  
		
		この図は群れ飛ぶ蝶の姿ですが、バックを「霰(あられ)文様」にし、その中に蝶を飛ばしています。 
		離れて見るとたなびく霞に見え、春霞に舞う蝶を表現した風情ある文様となっています。
		 
		縞の蝶 
		  
		
		少し離れて見れば、縞の織物にも見えます。小紋ならではの文様構成です。
		 
		菱蝶 
		  
		
		織り文様の菱織りを意識した文様です。一つ一つの単位は古典的な胡蝶文様を菱にしたものです。 
		形が美しく、吉祥文様の素材でもある蝶は昆虫の中では一番の人気です。
		 
		霰の蝶 
		  
		
		大小の丸を配した文様を「霰(あられ)」といいますが、この図は蝶を霰という点描で構成した文様です。 
		離れて見ると大小の点がぼかしの効果を出しています。
		 
		蝶尽くし 
		  
		
		形や大きさのちがう蝶を集めた蝶尽くし文様です。 
		蝶は豪華な文様や、愛らしく親しみやすいシンプルな文様まで、幅広く考えられました。
		 
		菊に文入り蝶 
		  
		
		蝶の中にさらに別の文様を入れて複雑な文様にしています。季節にとらわれない文様です。
		 
		絣に蝶 
		  
		
		絣織りの井桁文様をバックにした蝶文様です。 
		当時は紺絣も親しまれ、全国的に普及した織物なので、その雰囲気を染め文様に変えたものです。
		 
		菊蝶 
		  
		
		 
		蝶の胴を菊の花にし、羽根を葉に変えた、見立て文様です。 
		判じ物が大人気になった江戸時代には、文様にもこのような遊び心をふんだんに取り入れました。
  
		 
		
		次回も蝶をテーマに進めますが、たまには色恋の話にしましょう。
		 
		10 April 2013 
		*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します 
		
		
			
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