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		 船 
		
		目にはさやかに見えないけれども、肌に触れる風からは少しずつ秋を感じられる季節になりました。 
		秋になればのんびりと旅行をしたい思いですが、最近の旅は飛行機や新幹線で目的地に一気に着いてしまいます。 
		しかし、たまにはゆっくり旅をするのも良いでしょう。 
		今回の文様は乗り物の中でも最近あまり話題に上らなくなった船、その中でも忘れ去られている「和船」文様です。 
		一見文様にはなりにくそうに見えますが、古くから使われている文様です。 
		四方を海に囲まれ、雨の多い日本では、至る所に川が流れ、池や沼も身近なところにあります。 
		暮らしぶりは水との関わりが多く、水産業も盛んでしたので様々な船が活躍していました。 
		江戸の町には運河が張り巡らされ、水の都とも言われ、船は運搬に大きな役割を果たしていました。 
		当時の運搬には船が現在の車と同じぐらいに必要とされていたでしょう。 
		船の文様は、北前船のような大型船の文様もありますが、今回は、親しみやすい小型の和舟を取り上げます。 
		船文様は写実的なパターンが多く見かけられますが、大波を超えていく船に勇気をもらい、 
		穏やかな流れに乗る船に安らぎを感じるなど、波に揺れる船の姿を自分の気持ちに重ね合わせることもでき、 
		船は水辺文様になくてはならないアイテムです。
		 
		掛舟(かかりぶね) 
		  
		
		掛舟とは川などに停泊している舟のことですが、この文様には人影が見えません。 
		きっと漁師たちは仕事を終えて休んでいるところでしょう。停泊している舟だけを並べた文様ですが、 
		穏やかな川の流れに舟がゴツン、ゴツンとぶつかる音が 
		心地良く聞こえてきそうな親しみのある文様で、のんびりとした風情を感じる水辺風景文様です。
		 
		苫舟(とまぶね) 
		  
		
		苫舟とは、葦や、茅などで編んだ雨や露を凌ぐ屋根を付けた小舟。 
		主に川や、湖などで、漁師が使ったり、細い運河の荷物の運搬にも大活躍した舟です。
		 
		葦分舟(あしわけぶね) 
		  
		
		苫舟と同じ茅や葦で編んだ屋根を付けた舟ですが、 
		さらに、文様では葦や芒(すすき)などの秋草を組み合わせることで、風情ある侘びを感じさせる水辺文様となっています。 
		夏の着物に多く見られる、涼しさを表す文様です。
		 
		霞に帆 
		  
		
		追い風を受けた帆掛け船が漁をしているところでしょう。 
		帆の動きを強調した文様ですが、霞の線は舟体を省略しながら単調なパターンにし、 
		全体の流れをリズミカルな文様に構成しています。のどかな湖水風景を感じさせます。
		 
		帆掛け舟 
		  
		
		帆掛け舟の帆の部分だけを並べた文様です。 
		舟の形よりも帆の曲線をリズミカルに組み合わせ、そのおもしろさを強調した文様になっています。
		 
		錨(いかり) 
		  
		
		最後に、船にちなんだ文様、錨(いかり)文様を見てください。 
		錨は不動、力強さなど男らしさを表すのに使われることが多い文様ですが、 
		この文様は、錨[怒り]を縄で縛る[怒りを鎮める]の寓意ともいえる、 
		江戸の人たちが大好きな語呂合わせ文様です。
  
		 先週のクイズのヒント。 
		     3番目の文様には、誰でも一つは自分に関係のある文字が隠れています。 
		     クイズの答えは、 へ、お名前、郵便番号、ご住所と共にメールでお送りください。 
		     締め切りは9月11日(火)です。正解された方には熊谷さんから、すてきなプレゼントがあります。
  
		 
		05 September 2012 
		*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します 
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