寝た子を起こしてみる

箪笥の中で休眠状態のきものって、ありませんか。
「着ることはないけれど、捨てるにしのびない」きもの。
私の場合、この先絶対に着る機会はなさそうだけど、始末できなかったのが母の留袖です。
野草好きの母らしく派手さのない、波に葦の裾文様の留袖は、どうにも手放しがたく長く箪笥の中で眠ったまま。
時折、出してみては「どうしたものか」と思うものの、どうにもできず、また仕舞うことが続いていました。

留袖 裾文様



そんななか、WEBで見つけたのが「黒留袖着物リメイク/モモンガKIMONO羽織」という
なかなか魅力的なことば。
和遊湘南さんという、そのサイトでは留袖をモモンガコートの形に作り変えてくれるというのです!
羽織ではなく、モモンガコートというのがおしゃれじゃないですか。

「いいなあ」と思いつつも、母の留袖に鋏を入れることへのためらいもあり
1~2か月はサイトを覗いては妄想を膨らませるばかり。
ようやく重い腰を上げたのが3月半ば。和遊湘南さんにインスタ経由で連絡をし、
留袖の写真も送り、ご相談してみました。
レスポンスも早く、その日のうちに見積もりをいただきました。
和遊湘南のローチ幸さんがおっしゃるには、「比較的地味な文様なので普段使いにも」とのこと。
紬系のきものを着ることがほとんどの私にとって「普段使い」できなければ頼む意味がありません。
よし! 決めた!!!
それまでぐずぐずしていた分、一歩踏み出すと私も行動は速く、翌日には留袖を発送。
出来上がりは5月初めとのことで、楽しみに待つことに。

そして、5月1日「発送しました」のメッセージが!
5月2日の午前中には、「モモンガKIMONO羽織」を手にすることができました。

モモンガコートonきもの

さて、いかがでしょうか?
自撮りが難しく、姿見の縁が写り込んでしまっていますが(笑)
和遊湘南さんでは、共布で作ったKIMONOclipも付けてくれます(胸のあたりに留めています)。
モモンガKIMONO羽織がずり落ちないようにとの心づかいが嬉しい。
また別売りで、絹地に穴をあけない玉かんざし風のショールピンもありますので、好みに合わせておしゃれが楽しめそうです。
比翼仕立ての留袖は、ぽってりと重さがありましたが、モモンガKIMONO羽織になったら非常に軽くなったのもうれしいところ。

裾文様だったものが少し上の位置に来ると、地味なはずの文様もけっこう華やかに見えるというのは、発見でした。
私は普段あまり大きな柄のものを着ないので、コートとはいえ、これだけのボリュームの柄は、ちょっと気恥ずかしい。
それでも、ただただ眠るばかりだった留袖を起こしてあげて良かったなと思います。
箪笥に眠ったまま、私がもっと年を取って命を落としてしまえば、たぶんただの不用品として始末されるでしょう。
それでは、誂えた母も、きものもかわいそうです。
次の秋には、このコートを着ておでかけ、なんて考えたら楽しみで仕方ありません。

皆さんの箪笥にも長く眠っているきものはありませんか?
「どうしたものか」とお考えの方、こんな楽しみ方もあると知っていただけたら嬉しいです。
和遊湘南さんには、モモンガKIMONO羽織だけでなく、様々なリメイクの提案があります。
「眠っている子を起こしてみる」のも、きものの楽しみのひとつだと思います。

おまけ。
モモンガKIMONO羽織が到着した嬉しさに、ジーンズの上に羽織ってみました。
案外、これもありかも。

モモンガコートonきもの

3 May 2023  文・写真/八谷浩美

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