種から布をつくる(たくさんのふしぎ 2023年5月号)
白井仁 文 熊谷博人 絵 島田耕希 写真/福音館書店

福音館の「たくさんのふしぎ」シリーズは、月刊なのに、
じっくり時間をかけて作られる本当に贅沢な本。
その5月号が「種から布をつくる」。
和綿染織の白井仁さんのお仕事が絵本になりました。

ワタを4月の種まきから始めて、ネキリムシの害や台風から守りながら育て
やがて収穫したら、乾燥させ、種を取り、繊維をそろえて糸を紡ぎ
その糸を植物染料で染めて、機にかけ、素敵な布を織りあげる。

その一部始終を白井さんのやさしい文章と熊谷博人さんの渾身の絵が
大人にも子どもにも分かりやすく教えてくれます。
また、(たぶん)布のことをよく知っていらっしゃるであろうデザイナーの島田耕希さんの写真が白井さんの作品の風合いをよく伝えてくれていると思います。

トントンとリズム良く織っていくのが、機織りだと思われがちですが、
一枚の布ができるまでに本当はどんな手間や時間がかかっているのか、
言葉だけでは伝わらなかったもどかしさが、この絵本で一気に解消されます。
しかも、種から布までの長い工程がとても魅力的に描かれています。

農業と工芸と家族が無理なく自然にひとつながりになって、
白井仁という人の中にある。
その様子をかいま見ることで、他人であるはずのこちらまで、
どこか幸せな気持ちになります。

小学3~4年生で、この本に出合う子どもたちは、
何を感じ取ってくれるでしょうか。


ヤタ




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